2025年10月29日
- 認知行動療法
「自己嫌悪が止まらない理由」/認知行動療法カウンセリングセンター静岡浜松店
こんにちは、認知行動療法カウンセリングセンター静岡浜松店です。
今日は「自己嫌悪」についてお話しします。
■ 自己嫌悪は「落ちている」のではなく、“そこに縫い付けられている”
自己嫌悪で苦しんでいる人を見ていると、
ただ落ち込んでいるだけでも、
自分を戒めようとしているだけでもありません。
もっと切実で、逃げ場がない苦しさです。
- 帰り道で、自分のダメなところばかりが頭に流れ込んでくる
- せっかく楽しかった時間も「失敗探し」で上書きしてしまう
- 直したいのに行動へ向かえず、責めるところで止まってしまう
このとき、本人の中では
「責めたい」ではなく
「ここから動けない」
が起きています。
自分を傷つけているという実感は本物です。
そしてそれ自体は間違っていません。
ただ、そのさらに奥を見ると、
本当は他の場所へいきたいのに、
自己嫌悪の場所から離れる“足場”が見つからない
という状態になっています。
「守っている」わけでもなく、
「落ち着いている」わけでもない。
ただそこに“留めつけられてしまっている”。
このどうにもならない感じが、自己嫌悪の正体に近いものです。
■ なぜ「自己嫌悪の場所」から動けなくなるのか
自己嫌悪は、表面では「反省している」ように見えます。
しかし実際の心の動きは、反省ではなく固定に近い形です。
人は本来、反省のあとには
気づく → 考える → 次の行動へ
という流れがつながります。
けれど自己嫌悪が強いと、この流れが途中で切れます。
起きているのは
気づく
→ すぐに “自分そのもの” への攻撃
→ そこで止まる
という回路です。
この「人格レベルへの落下」が早すぎるせいで、
“行動まで降ろす前に” 苦しみでいっぱいになってしまうのです。
■ 自己嫌悪の正体は「出口」ではなく“滞留地点”
ここがとても誤解されやすいところです。
自己嫌悪は
「ここで止まっている」とも違うし
「自分を守っている」わけでもない。
実態に近いのは、
そこに足を取られて、前にも後ろにも行けず
ずっと“そこだけが現実”になってしまう
という状態です。
だから本人の中では、
- 責めることを選んでいるわけでもなく
- 責めることで安心を得ているわけでもなく
- 責めることで前に進んでいるわけでもない
ただ
そこから動けない。
■ 「意図」ではなく「巻き込まれ」
自己嫌悪は、考えて選んでやっているものではありません。
気づくと始まっていて、止める前に心の方がそちらへ持っていかれる。
これは「操作」でも「癖」でもなく、巻き込まれに近い感覚です。
・何か出来事がある
↓
・一瞬で「責めるモード」に切り替わる
↓
・気がつけばその渦の中にいる
このスピード感は「選択」ではなく “反応” です。
「もうやめたい」と思っても、
“その前に心が先に動いてしまう”。
これが「巻き込まれる」という状態です。
■ だから「励まし」も「前向きも」届かない
周囲からすると
自分を責め続ければしんどいだけなのに
どうしてそこで止まってしまうのか?
と見えます。
しかし当人側では、
他の場所にどう移ればいいかすら分からない
(だから結果的に自己嫌悪しか“扱える手段”がない)
このズレが起きているために
励ましも、慰めも、肯定も届きません。
■ 自己嫌悪から抜けられない理由は「出口がない」のではなく“出口が見えない”
自己嫌悪の渦中にいるとき、人は
「どうすれば止められるのか」
すら考えられません。
なぜなら、本人にとっては
- ここで苦しむこと以外に、今の自分を扱う手段がない
- だから“やめる/変える”という選択肢がまだ存在できていない
からです。
多くの人が誤解しているのは
「自己嫌悪を続ける=選んでいる」
という見方です。
実際には
選んでいるのではなく“そこしか通路がない”状態です。
■ では、どうすれば外に出られるのか
ここで初めて「認知行動療法」が意味を持ちます。
CBTは自己嫌悪を無理にやめさせるものではありません。
まず行うのは
自己嫌悪しか選択肢がなかった状態に
「別の扱い方」という道をもう1本並べる
という作業です。
つまり
自己嫌悪を減らす介入ではなく、
“別の足場を用意する”介入です。
■ どんな足場か?
難しくありません。
最初に扱うのは「誤りの修正」ではなく
何が起きたか
(※人格ではなく出来事として)
ここです。
たとえば
❌ 「やっぱり自分は駄目」
ではなく
⭕ 「今日は言葉を選ぶのが難しかった」
このレベルに戻すことで、
自己“否定”ではなく
自己“観察”のほうに一瞬だけ視点を動かす
これが 足場の第一歩 になります。
■ 足場ができて、初めて“次の一歩”が考えられる
多くの人が誤解しがちなのは、
反省 → 改善
ではなく
自己嫌悪(人格否定) → そこで滞留
だから、外へ出るには
出来事への切り戻し
→ 「じゃあ次は少しこうしてみてもいいかもしれない」
という順番が必要になります。
ここでようやく、「行動」が自己嫌悪の代わりの“つなぎ止め”になる。
このとき初めて
「罰」としての自己嫌悪の役割が
「次の選び直し」という方向に引き継がれていきます。
■ 自己嫌悪は「戦う相手」ではなく、“役割を降ろす対象”
ここまで見ると分かる通り、
自己嫌悪は「やめれば楽になるもの」ではありません。
なぜなら
自己嫌悪 = 苦しみ
ではなく
自己嫌悪 = 苦しみの“置き場”
だからです。
置き場がそこにしかなかった。
それしか扱い方がなかった。
だから続いただけ。
CBTの考え方は
❌ 自己嫌悪を消す
ではなく
✅ 苦しみの“置き場を移す”
という方向です。
■ 認知行動療法で最初にやること
自己嫌悪が強いとき、
頭の中には「どう思われたか」「失敗したかどうか」だけが残りやすくなります。
認知行動療法で最初に行うのは、
そこからいきなり変えようとするのではなく、
その場で自分に何が起きていたのかを思い出すこと
です。
むずかしいことではなく、
・誰が何を話していたか
・自分はどんなふうに関わっていたか
・どこから苦しさが強くなったのか
この3つを整理して今後の対処法を考えていきます。
■ カウンセリングの中で最初に一緒にやること
自己嫌悪が強い人は、出来事のあとにすぐ「自分の評価」に飛びます。
そこでカウンセリングではまず、この“飛ぶ前の部分”を一緒に丁寧にたどり直します。
進め方は次のような形です。
- 何が起きたのかを、責める前のところまでゆっくり戻る
- その時、自分の体や心がどう動いたかを一緒に確認する
- どこから苦しさが強くなったのか、線を引くように見つける
ここまでを“整理する”のではなく、
**対話の中で一緒に「拾い上げていく」**形です。
■ なぜこういう進め方なのか
自己嫌悪で苦しくなる時、「できなかった」の一点しか残らず、
“途中までできていたこと”が頭から抜け落ちてしまうからです。
カウンセリングでは、
「どこで止まってしまったのか」
→ つまり“限界地点”を一緒に見つける
ここを扱います。
「うまくできなかった」の奥には
- 言いかけた
- 聞こうとした
- 関わろうとした
という途中までの行動が必ず存在します。
誰もそこを見ようとしていないだけです。
■ そこが見つかると、初めて「次の一歩」が現実的になる
ここでやっとカウンセリングの特徴が出ます。
一般的なアドバイス:
「次はもっと話してみよう」
CBTでの実際:
「どこまでできていたか」→「その先に“半歩”」
つまり
今できているところから、あと半歩だけ
を一緒に考えます。
■ Q&A
Q1.「自己嫌悪をやめたら甘くなるのでは?」
→ 多くの方が最初にそこを怖がります。
しかしCBTでは“自己嫌悪の代わりになる足場”を先に用意するため、
甘やかしではなく「扱いの再設計」です。
Q2.「過去を全部話さないと変わらないのでは?」
→ すべて話す必要はありません。
出来事を素材として扱う段階で十分進みます。
必要なときだけ触れれば良く、掘り返すことはしません。
Q3.「うまく説明できないままでも相談していい?」
→ 大丈夫です。
説明することより、“いまどこに留められているのか” を一緒に確かめていきます。
■ まとめ
自己嫌悪は、弱さでも甘えでもなく
「そこしか場所がなかった」結果として続いています。
だからこそ
敵にして戦う必要もありません。
やめるのではなく、
別の置き場をつくること。
それが、認知行動療法が扱う自己嫌悪の改善です。
■ 静岡・浜松で自己嫌悪への認知行動療法カウンセリングをご希望の方へ
当センター静岡浜松店では、
「自己嫌悪が止められない」「頭の中で自分を責め続けてしまう」
というご相談を少なくない数お受けしています。
浜松店は完全予約制のプライベート空間で、
対面・オンラインのどちらにも対応しています。
【所在地】
〒430-0944 静岡県浜松市中央区田町231番地8 プレイスワン田町301号室
(遠州鉄道 遠州病院駅 徒歩3分)
【営業時間】
10:00〜20:00(完全予約制)
【WEB】
https://hamamatsu.cbt-mental.co.jp/
【LINE(相談・ご予約)】
https://lin.ee/26sKHRK8
【お申込フォーム】
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSelm3nMBwOyvwnkhrkihe-APBzNTll2NL4fsPB6b6hHMzC8GA/viewform