なぜ人は退職代行を使うのか/認知行動療法カウンセリングセンター静岡浜松店 | 認知行動療法カウンセリングセンター静岡浜松店

MENU

――その背景にある“対話の止まった心”

こんにちは、認知行動療法カウンセリングセンター静岡浜松店です。

退職代行を利用する人が増えています。
若手だけでなく、30代・40代、時には管理職クラスでも「直接言えず、他者を介して辞める」という選択をする人がいます。

この現象を
「最近の人は打たれ弱い」
「自分で言えないなんておかしい」
と切り捨ててしまう声もありますが、そこには見落とされやすい心理的背景があります。

退職代行は“怠け”でも“逃げ”でもなく、
「心がこれ以上壊れないための最後の手段」 として使われる場合が少なくありません。

本来なら「辞めます」の一言で済むはずの場面。
しかし、その一言が胸の奥でつかえてしまい、言おうとすると、涙・恐怖・罪悪感のほうが先に出てしまう。

ここにあるのは意思の弱さではなく、
“言葉が成立しないほど追い詰められた心理状態” です。


1.なぜ人は退職代行を使うのか(表に見える理由)

退職代行を使った人に話を聞くと、次のような理由が挙がります。

この段階では、「辞めたい」だけが問題ではありません。

「傷つきたくない」「これ以上崩れたくない」
という、防衛反応のほうがずっと前面に出ています。

退職とは“選択”ではなく、“避難”。
心が限界まで摩耗した結果の行動であることが多いのです。


2.その奥にある“心理構造”

表面的には「伝えられない」ように見えても、
実際にはその前段階に、いくつかの心理的ハードルが積み重なっています。

見えている状態実際には起きていること
上司が怖い対話=攻撃・拒絶という学習
迷惑をかけたくない迷惑=存在価値の否定
こじれたくない“一度崩れたら人生終了”という予測
何も言えない感情過多で処理不能・思考停止

つまり、
問題の正体は “性格の弱さ” ではなく

「関係の中でどう自分を扱っていいかわからない状態」
です。

心理学的には、こうした状態をコミュニケーションの「機能不全」と呼びます。
これは、怒り・恐怖・羞恥(感情)が処理しきれなくなり、言葉よりも先に身体と防衛本能が反応してしまう状態です。


3.退職代行という選択が生む“二次的な負担”

退職代行そのものが悪いわけではありません。
適切な「緊急避難」として必要になる場面もあります。

しかし、そこで終わると次のような“後味”が残ります。

●① 問題解決の土台が育たない

伝える/終わらせる経験をしていないため、
次の職場で同様の局面が起きても対応スキルが身につきません。

●② 自己評価に影が残る

辞められた安心の裏側で
「自分には対話ができなかった」という引っかかりを抱える人は多いです。

●③ “避けると守れる”という学習が強まる

短期的には楽になりますが、
「言わない」という回避行動が強化され、不安耐性が育ちません。

●④ 人間関係の構造が繰り返される

原因は会社ではなく“対話不全”のため、場所を変えても再発しやすくなります。

退職の是非よりも重要なのは、
**「辞め方が、その後の自分の生き方に影響する」**という点です。


4.必要だったのは「勇気」ではなく“整理と対話の技術”

退職代行を使った人の多くは「勇気がない」わけではありません。

不足していたのは、
“自分の内側を整理する力”
“境界線を穏やかに引く表現スキル” です。

人間関係において重要なのは「我慢」でも「支配」でもなく、
資料にもある通り 「折り合い(=境界線の調整)」 です。

【雛形60分版】⑧よりよい人間関係を築くためのコミュニケーショ…

ここが十分に練習されていないと、

のいずれかに偏り、対話が成立しなくなります。

退職代行は、この「折り合いの技術」が途絶えた地点で使われるものなのです。


5.認知行動療法(CBT)が支えられる領域

CBTは「考え方を変える技法」ではありません。
“対話ができるための下支えとなる土台” を整える方法です。

CBTが扱うもの
事実と解釈の整理「怒られる」に根拠はあるか
感情の言語化苦しさの正体を明確にする
予測の検討“最悪”の確率と現実を切り分け
行動リハーサル伝え方・場面練習
境界線の再設定距離の結び直し方を学ぶ

退職を止めるのではなく、
“終わらせ方”や“離れ方”を自分の手に戻す支援 と言えます。


6.次の職場で同じことを繰り返さないために

退職という出来事そのものは、悪ではありません。
問題は、“何も回復しないまま次の場所へ移る”こと。

これらが整っていないと、
環境が変わっても「人間関係の型」は繰り返されます。

退職後に必要なのは
立ち去ることではなく、“回復” です。


まとめ

退職代行が増えている背景には
「対話力の低下」でも「メンタルの弱さ」でもなく、

“言葉が届かず止まってしまった心” があります。

だからこそ、本来取り戻すべきは
「強さ」ではなく、「対話の土台」なのだと思います。

認知行動療法は、辞めることを止めるための支援ではなく
“人間関係の結び直し方を育てる技術” として使うことができます。

もし、退職という選択のあとに
「もう同じ形で傷つきたくない」
「次は関係を断つ前に、自分の言葉で向き合えるようになりたい」

――そう思えるタイミングがきたとき、
CBTは現実的な支えとして役立てることができます。

【静岡浜松店】
〒430-0944
静岡県浜松市中央区田町231番地8 プレイスワン田町301号室
(遠州鉄道 遠州病院駅 徒歩3分/完全予約制)

▼WEBサイト
https://hamamatsu.cbt-mental.co.jp/

▼LINE
https://lin.ee/26sKHRK8

▼予約フォーム
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSelm3nMBwOyvwnkhrkihe-APBzNTll2NL4fsPB6b6hHMzC8GA/viewform

一覧に戻る