静岡浜松の認知行動療法研修『成人期発達障害に活かす認知行動療法の技術と視点』 | 認知行動療法カウンセリングセンター静岡浜松店

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── 金澤潤一郎先生による実践的な支援技術と“構え”を学ぶ時間

2025年7月に開催されたオンライン研修にて、北海道医療大学の金澤潤一郎先生をお招きし、「成人期の発達障害支援における認知行動療法」をテーマに学ぶ機会がありました。

本記事では、認知行動療法カウンセリングセンター静岡浜松店として、セミナーの内容を振り返りながら、臨床や支援に活かせる学びの要点をお届けします。


正しい支援よりも、“ともにいる”姿勢を

セミナーの冒頭から金澤先生が繰り返しお話しされていたのは、「正しい支援を目指しすぎる危うさ」でした。

支援者が“正解”を求めるあまり、クライエントの気持ちやタイミングを見落とすことがあります。ときに「これが最善だから」とアドバイスしたことが、本人にとっては「分かってもらえなかった」と感じさせるきっかけになってしまうこともあるのです。

本研修では、関わり方の“技法”以上に、「どう在るか」「どのように関わるか」といった支援者の構えが問い直されました。


無意識の“否定”──間違い指摘反射に要注意

講義中に紹介された「間違い指摘反射」という考え方は、支援のあり方を見直すうえで重要なヒントとなりました。

これは、支援者が当事者の認識の“ズレ”に気づいた際に、つい「それは違う」と指摘してしまう反応のことです。
本人の成長や学びを願っての指摘でも、当事者にとっては「また否定された」「自分の考えは通用しない」と受け取られてしまい、結果として“話すこと”や“考えること”自体をやめてしまう危険があります。

支援とは、“正すこと”ではなく、“一緒に考えること”。
この基本を改めて思い出させてくれるエピソードでした。


繰り返された否定の先にある“無力感”

金澤先生は、「否定的な体験の積み重ねが、発言や思考を止めさせてしまう」と語ります。

特に発達特性を持つ方々は、これまでの人生で周囲からの否定や批判を繰り返し経験していることが多く、自分の感じ方や考え方に自信を持てなくなってしまっていることがあります。

そうした方にとっては、「間違いを指摘されること」そのものが、過去の痛みを呼び起こす行為となることもあるのです。


支援者は“キャディ”、プレイヤーは本人

支援者は「本人の人生をプレイする立場」ではありません。
金澤先生は、支援者の役割を「キャディ」に例え、当事者が「自分で考えて選び、自分で打つ」ことの重要性を説かれました。

助言を与えることはできても、代わりに行動することはできない。
だからこそ支援者には、「本人が選ぶ力を取り戻す支え」としての視点が求められるのです。

ときに「どうして分かってくれないのだろう」「動いてくれない」と感じる場面でも、“こちらがクラブを握ってしまっていないか?”と、自問する姿勢が必要なのかもしれません。


矛盾した感情を抱えながらも、支援を選び続ける

本研修では「コンパッション」=思いやりについての深い話もありました。
支援者が「イライラしてしまう」「無力感を抱いてしまう」といった感情を抱くことは、決して異常なことではありません。

むしろ、“そうした矛盾を抱えながらも、それでもなお支援に向き合い続ける”という態度こそが、コンパッションの核心にあると金澤先生は語ります。

「支援者である私たちも、常に完璧ではいられない」。
その前提に立ったとき、もっと柔軟で、もっと深く、関係性を築く支援が可能になるのかもしれません。


支援の本質とは、迷いながらも“選び続ける”こと

支援とは、毎回「どう関わるか」を選択し続けるプロセスです。

…どれにも明確な正解はありません。
だからこそ、「何を選んだか」と同じくらい、「なぜその選択をしたのか」を振り返る姿勢が求められます。

支援とは、“一発勝負の判断力”ではなく、“継続的な対話力と振り返り力”。
それを痛感させてくれる、実に濃密な研修となりました。


主催者より──“構え”を見直すきっかけとして

この研修を通じて、参加者の多くが「自分自身の支援姿勢」を見つめ直す機会になったと語っておられました。
「支援は何かを“してあげること”ではなく、“共に考えること”」——そんな原点を再認識できたのではないでしょうか。

認知行動療法カウンセリングセンターでは、今後も“技法”だけでなく、“人との関係性の築き方”に焦点を当てた研修を開催してまいります。


🎥録画視聴のご案内

本研修の録画視聴は、下記のPeatixページよりお申し込みいただけます。
復習や参加が難しかった方にもご活用いただければ幸いです。

視聴申込ページ:
https://peatix.com/event/4449707/view


🏢 認知行動療法カウンセリングセンター静岡浜松店


👨‍🏫 講師紹介

金澤 潤一郎(かなざわ じゅんいちろう)先生
北海道医療大学 心理科学部 准教授。公認心理師・臨床心理士。
成人期ADHD・ASDに対する認知行動療法の実践と研究を専門とし、精神科医療・教育・心理支援において幅広く活動中。
倫理的支援やコンパッションの実践にも力を注ぎ、現場感ある語り口と実用的なアプローチが支持されている。

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