2024年11月22日
- 認知行動療法
盗癖(クレプトマニア)改善のためのカウンセリング(認知行動療法)
こんにちは。認知行動療法カウンセリングセンター静岡浜松店の岡村です。
今回は、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性がある「盗癖(クレプトマニア)」についてお話しします。盗癖は、意志では抑えきれない衝動によって物を盗む行動を繰り返す状態を指します。このような問題に悩む方にとって、認知行動療法(CBT)がどのように役立つか、具体的なアプローチと共に解説します。
盗癖とは?— 衝動に支配される行動のメカニズム
盗癖は、必要のない物を繰り返し盗む行為が特徴で、通常は計画的ではなく衝動的に行われます。この行為は、緊張感や不安を一時的に解消する手段として機能することが多く、経済的な理由や実際の必要性が動機ではない点で一般的な窃盗行為と異なります。
盗癖の主な特徴は以下の通りです:
- 緊張感の高まり:盗む前に強い不安や緊張を感じる。
- 衝動的な行動:計画性はなく、瞬間的な欲求で動くことが多い。
- 一時的な満足感:行為の直後に一時的な解放感を得る場合がある。
- 罪悪感や自己嫌悪:後から罪悪感や自己嫌悪に苛まれることが多い。
盗癖を持つ方々は、自分では制御できない衝動に苦しみ、その結果として生じる感情的な負担に悩んでいます。これは道徳心や意志力の問題ではなく、専門的な支援を必要とする心理的な問題です。
他の精神的問題との関連性
盗癖は、うつ病や不安障害などの精神的な問題と関連する場合が多くあります。また、衝動制御に関する問題を抱えていることがしばしば見られます。このような関連性を考慮し、カウンセリングでは盗癖だけでなく、背景にある心理的な要因や関連する問題にもアプローチすることが重要です。
認知行動療法(CBT)のアプローチ — 衝動とその根本原因に働きかける
認知行動療法(CBT)は、盗癖のカウンセリングにおいて非常に効果的なアプローチです。CBTでは、問題行動の背後にある考え方や感じ方に焦点を当て、それを現実的かつ適応的なものに変えていくことで、行動の改善を目指します。
1. 認知の再構成
盗癖に悩む方は、「盗むことで不安が軽減される」や「自分には衝動を抑えられない」といった思考を持つことが多いです。CBTでは、こうした非現実的な思考を見直し、新たな視点を提供します。
- 例:「盗むことは一時的な解決策であり、根本的な不安解消にはつながらない」と理解する。
こうした再構成により、盗む行為を行わなくても感情を処理できる自信を育みます。
2. 行動療法 — 曝露療法で衝動を管理
行動療法の一環として、曝露療法が用いられます。これは、盗みたい衝動を感じる状況に意図的に直面し、その場で盗まずに感情を処理する練習を行うものです。
- 段階的な練習例:
- 盗みの衝動が高まりやすい場所に短時間滞在する。
- 感情を記録し、どのように対処したかを振り返る。
このプロセスを繰り返すことで、衝動をコントロールしやすくなり、盗まずに衝動を処理するスキルを習得します。
3. リラプス・プリベンション(再発予防)
盗癖は改善が進んでも再発のリスクが高いため、再発を防ぐ計画を立てることが重要です。リラプス・プリベンションでは、再発リスクとなる状況を特定し、それに対する対処方法を考えます。
- 例:ストレスを感じたときに代わりにできるリラクゼーション法を練習する。
また、家族や友人といったサポートシステムを活用し、再発を防ぐ環境作りを進めます。
4. 衝動管理スキルの向上
CBTでは、マインドフルネスやリラクゼーション法を取り入れることで、衝動が高まった際に冷静さを保つ練習を行います。
- 具体的な方法:
- 呼吸法や瞑想を通じて心を落ち着ける。
- 衝動を感じた際に5分間の間を置き、感情を観察する。
これにより、盗癖の衝動が湧いても感情に流されずに行動を選択できるようになります。
家族や友人の役割 — 回復を支える環境作り
盗癖の克服には、周囲の理解と支援が欠かせません。家族や友人が盗癖の本質を理解し、非難ではなく感情的な支えを提供することで、回復への道がスムーズになります。
- 具体的なサポート方法:
- 盗癖の行為そのものではなく、衝動の背景にある感情に寄り添う。
- 必要な場合は専門的なカウンセリングを勧める。
周囲の支えが、改善へのモチベーションを高め、再発防止に繋がります。
まとめ
盗癖は、放置すると心理的・社会的な影響が大きくなる可能性がありますが、適切な支援を受ければ克服が可能な問題です。認知行動療法(CBT)は、盗癖の衝動をコントロールし、心理的な安定を取り戻すために有効なアプローチです。
認知行動療法カウンセリングセンター静岡浜松店では、専門的な知識を活かして一人ひとりに合わせたカウンセリングを提供しています。「どうすればいいかわからない」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。無料相談も承っております。
皆様が健やかな日々を取り戻せるよう、全力でサポートさせていただきます。
認知行動療法カウンセリングセンター静岡浜松店
https://hamamatsu.cbt-mental.co.jp/
——筆者情報——
岡村優希
株式会社CBTメンタルサポート 代表取締役
認知行動療法カウンセリングセンター代表
公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士
個人事業主として私設カウンセリングルームの運営を経て、株式会社CBTメンタルサポートを創業し、メンタルヘルス支援者向けのサービス事業を展開している。主宰しているオンラインコミュニティ『認知行動療法の学校』の会員数は約400名。
さらに、カウンセリングルームを全国に5店舗運営しており、全国展開を目指している。
◆執筆書籍
「臨床心理学 〈123(第21巻第3号)〉 問いからはじまる面接構造論 「枠」と「設定」へのまなざし」金剛出版
「遠隔心理支援スキルガイド」 誠信書房
◆テレビ出演
読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2024年7月4日
「あなたの味方!お役に立ちます」のコーナーに高所恐怖克服のための専門家として出演
◆雑誌掲載
「からだにいいこと」 2022年12月号、2023年2月号
◆近年の講演実績
2024年2月21日
広島大学医学部にて「セルフケアに役立つ認知行動療法入門」についての講師
2023年2月9日
NTT PARAVITA株式会社にて「認知行動療法」をテーマとした社内研修の講師
2022年7月6日
筑波大学医学医療系精神医学の勉強会で「パニック症の認知行動療法」についての講師
その他、学会発表多数
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